田舎の母に捧げるバラッドK

フシギな都会にいる僕が、田舎の母に送るコトバ

そろそろ髪切ろうかなと思い、僕は深夜の街へとくりだす

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やあ、母さん元気かい。

 

最近、髪が伸びてきたかも。
ボサボサで肩につく勢いまで伸びた。
そろそろ髪を切らないといけないな。

 

こっちでは「カリスマ美容師」に髪を切ってもらっている。
雑誌で有名な、TVでも取り上げられたようなすごい人だよ。
国営放送しか見ない母さんはしらない人だろうけど。

 

なんでかしらないけど名前がヨーロッパ風だったりする。
なんとか川ジョアンヌとか(苗字は難しい漢字で忘れた)。
本名?ハーフなの?ペンネーム?
見た目はゴリゴリの日本人なんだけどね。
どうしてそんな名前なのかちょっと恐ろしくて聞けない。

 

とにかく予約をとるのが大変で、2週間待ちになったりもする。
そしてイケてない僕でも「イケメン」に変身することができる。
こんなイケメンの僕を見たら母さんは何ていうだろうな。
母さんはビックリして「あらまぁ、おどろぉいだ」と言うのだろう。

 

…というのは冗談。

 

カリスマ美容師になんて行ってない。
田舎者の僕はそういうところは苦手だ。
美容師でなく「理容師」で髪を切ってもらってる。

 

僕のいっているところは中年のおじさんの理容師。
どこか雰囲気がピシっとしていてバーのマスターという感じだ。
僕の中ではこっそり「マスター」と呼んでいる。

 

都会にきて、初めて住んだ町で初めていった理容師だ。
他の町に引っ越してもずっとそこを利用している。

 

マスターは外見もしぐさもマスターっぽい。
見た目も渋い。まず髪をオールバックにしているし、服も白っぽい作業服とかでなく、ベストを着てる。
機敏に動き、動作に無駄がなく、姿勢もピシっとしている。
そして声も渋めで、本当にマスターという感じ。

 

マスターの店は、田舎でいっていた理容室に少し似ているのかな。

 

田舎では、小さい頃から田舎からでるまで、ずっと近所の理容室のおばさんに髪を切ってもらっていたよね。
おばさんが1人でやっていて、こじんまりしている理容室。
そして小さい子からおじいさんやおばさんと幅広い年齢層の人が来てた。

 

髪を切るときは毎回どう切りたいかそれほど指示するわけでなく、「いつものように」という感じで切ってもらっていた。
長い間のあうんの呼吸というべきか。

 

そしておばさんとはいろんな話をした。
学校のこと、友人のこと、家のこと。とにかくたくさん喋った。
おばさんは僕のことをしっているし、僕のまわりのこともしっているし、僕に関するいろんなことをしっている。

 

普通の近所の人とは違って、こんなにも話すことはない。
なんか第二の母みたいな感じだったかも。

 

もちろんマスターとは田舎のおばさんみたくそんなに親しいわけじゃない。
そこそこ世間話はするが、知り合いの域をでない。
田舎での長い時間で築いた関係とはぜんぜん違う。
それはそれでしょうがないことなのだけど。

 

しかし、マスターだって田舎の理容師のおばさんみたいに地元に人にとっては
第二の母、みたいに思ってる人もいるのかもしれない。男性なので第二の父?

 

そう考えると、日本中に誰かの第二の母(また父)になってる理容師が、あちらこちらにいると思うと不思議な感じがするよね。

 

 

こっちで住んでる間にマスターのお店にずっと通うことになるだろうな。
そしていつかは「マスター、いつのもの」と頼める日はくるのかな。

 

というわけで、あいかわらず僕はイケメンじゃない。田舎者のまま。
残念なことに母さんと久しぶりに会っても見違えるほど変わってもいないだろうな。
まあそんなわけだから、いつか帰ったとしても驚きはないから楽しみにはしないでね。

 

それじゃあ、また。