田舎の母に捧げるバラッドK

フシギな都会にいる僕が、田舎の母に送るコトバ

隣人がうるさいので、僕は変身する

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やあ、母さん元気かい。

 

最近ここ数日、下の階の住人がうるさい。

 

夜中ずっとゴトゴト、ガタゴト、ドン!とか、何か音がする。
もしかして引っ越しをしてきたのかもしれないな。

 

日中は働いていて片付けをしている暇がないのかしらないけど、
いちいち夜中にずっとやらないでも。
周りで寝てる人がいるって、わからないのかな?

 

眠りが邪魔されて少しまいってるよ。
まあ耳栓つけて寝ているので、なんとか音を軽減して寝てはいるんだけどね。

 

でも、前に住んでいたアパートの住人よりはマシだろうな。
前のアパートの住人はひどかった。
そのせいで引っ越したともいえるけど。

 

母さんには話してなかったかな。
あの事件を…

 

僕が前に住んでいた木造アパートに、その20代くらいの男性が隣に引っ越してきた。

 

引っ越しの当日に、僕に簡単な挨拶というか
「引っ越しで少しうるさいかもしれませんが」という連絡みたいな挨拶をしてきた。
今の世の中、隣人なんて我関せずみたいな感じなのに、
律儀に挨拶してくれて、きちんとした人なのだなと思ったよ。

 

そして次の日にそれは起こった。

 

その頃は遅い時間帯に起きていたんだけど、
こちらが朝寝ている時に、隣の人の目覚ましのベルの音がジリリリリリと鳴り響く。
ピピピという電子音じゃなく、カナヅチで叩くタイプのベルの音だ。
しかも木造で壁が薄く、ほとんど自分の部屋で鳴ってるのとそんな変わらないレベルの音だった。

 

5秒~10秒鳴るならしかたないと思うよ。
まあそういうこともある。人生はお互い様だ。

 

でもそいつは違った。

 

さて母さんは何分鳴り続いたと思う?
30秒?1分?5分?いやいや。

 

30分だ!

 

オーマイガッ!って人生で生まれて叫んだと思うよ。
僕は信じられなかったよ。
世の中こんなことが起こるんだって。

 

僕はパニックになっていた。
いやいや、これは目覚ましなんかじゃなく、火災報知機が鳴っているんじゃないのか?
いやいや、引っ越しで疲れきって死んでるんじゃないのか?

 

とにかくこれは異常だと思って隣人をたずねたよ。
インターホンなんて小粋なものはなかった古いアパートだったので、
グーでドンドンドン叩いたよ。

 

ドンドンドン

 

あらわれる様子はない。

 

ドンドン

ドンドンドン

 

まだまだあらわれる様子はない。

 

多少の怒りをグーにこめて。

 

ドンドンドンドン

 

思いをこめて。

 

ドン!

 

心をこめて。

 

ドンドンドン

 

何度も何度も。

 

ドンドン

ドンドンドン

ドン!

 

すると彼は現れた…

 

とても眠そうな顔をして…

 

 

それからうるさいことを伝えたよ。
大人だから怒鳴ったりはせず冷静に対応したよ。
一応、変にはもめなかったから。

 

たまたま引っ越しで疲れたせいかなとも思ったけど、
結局、それからも何度かそういうことがあった…
でも、何かよくわからないが次第にベルの音は聞こえることはなくなった。

 

後に落ち着いた生活を取り戻していったけど、彼は僕にはっきりと残していった。

 

トラウマを。

 

 

母さん、世の中は広いよ。
都会ではたまにこんな人と出会う。僕の知ってる常識をはるかに超えた人だ。

 

そっちは静かなんだろうな。
家同士も離れているし、しかも家の周りは田んぼだから。

 

家にいる時はまわりの音なんて気にしたこともなかったのに。
いつの間にか音に敏感な人間になってしまったよ。

 

とにかく僕はそんな出会いと別れを繰り返しこっちで生活している。
そしてまた僕を驚かせる常識をはるかに超えた人と出会うのだろう。
超えた人。超人。スーパーマンと。

 

まあ、僕にとっては母さんもスーパーマン(いや、スーパーママン?)なんだけどね。
いろんな意味で。

 

それじゃあ、また。

今日は静かに眠れるかな…